March 27, 2005

True Parallels / TRUST COMPANY

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iPodの登場で、ヘヴィ・ロックは受難の時代を迎えることになりました。


兎に角、音が軽い。僕自身AACで少し気を遣ってビットレートを192Kbpsにしていますが、やはりKORNとか聴いちゃうと「あら、こんな音でしたっけ」みたいな拍子抜け感を覚えてしまうのは否めません。勿論、外ではiPod使って、自宅では各々ご自慢のオーディオを駆使して重低音を楽しむという選択肢もあるんでしょうけど、ここまでインターフェースとして生活に溶け込んでしまうと、必然的に自宅で音楽を聴く際にもデスクトップでiTunesを回す時間が長くなって。
それまで棚に眠っていたクラシック・ロック名盤の数々をiTunesに取り込み、年代ごとのプレイリストを作ってはロックの歴史を追体験する、なんて新たな楽しみが増えた一方で、腹にガンガンくるような極上のヘヴィ・ロックから距離を置くようになってしまいました。


そんな中で、iPodで聴くヘヴィ・ロックとして久しぶりに気持ち良く「当たり」だったのが、TRUST COMPANYの『True Parallels』。『時計仕掛けのグランジ』でも紹介した前作『Lonely Position Of The Neutral』に続く2ndアルバムです。
これならiPodでも気持ち良く聴ける(理由は後述)。
前作に引き続きLINKIN PARKとの仕事で知られるドン・ギルモアをプロデューサーに迎え、更に勝負曲であるシングル"Stronger"と"The War Is Over"に限っては"The Reason"の大ヒットが記憶に新しいHoobastankやPODのプロデューサーであるハワード・ベンソンを2曲限定で招聘する気合の入った護送船団っぷり。
これだけ手を尽くしてメロディがカスなアルバムが出来たら、逆に奇跡です。
洗練されたメロディに彩られた完璧なサウンドを持つアルバムが仕上がりました。まさに横綱相撲。


詳しくは前作のレビュウ或いは2003年シーン総括を見ていただきたいのですが、TRUST COMPANYは「LINKIN PARKショック」とも言うべきポップ・シーンの間隙を見事に突いたバンドとしてシーンに名乗りを上げました。
ロックの1ジャンルとして限定ファンだけが聴くマーケットだった「ヘヴィ・ロック」とは別に、LINKIN PARKの大ブレイクによって生まれた「ポップの1ジャンルとしての絶叫ヘヴィ・ロック」。デス声を聞き流せる耐性を持ったポップ・リスナーが増えたことによって生まれたメインストリーム・ロックでの「気軽に聴けるヘヴィ・ロックみたいなもの」に対する需要を「サンプリング的に使われるカジュアルなデス声」と「ヘヴィ・ロックほど暑苦しくないポップ対応の細いボーカル」で満たし、アルバムを初登場11位に送り込みます。
因みに、少し手法は違うものの、同じスタンスでデビュー作をヒットさせたのがHoobastank。


Incubusが「ヘヴィ・ロックの異端児」というフレーズで実はヘヴィ・ロックのマーケットに潜り込もうと必死になったり、Hoobastankが他のヘヴィ・ロック・バンドとは一線を画すそのポップ・リスナーなファン層に目をつけて"The Reason"のモンスター・ヒットを飛ばすのを尻目に、TRUST COMPANYは非常にオーソドックスな方法論で2作目を作ってきました。
1stシングル"Stronger"(これはポップスの名曲だ)のタイトルそのままに、前作の路線を踏襲して、それをただ「より強く」しただけのアルバム。
相変わらずケヴィン・パーマーのボーカルは徹底して爽やかで、日系人ジェームズ・フカイのギターは同じく徹底して滑らか。エモーションの爆発というよりは効果音的に用いられるデス声は楽曲の邪魔をしないよう小憎たらしいまでに配慮されたカジュアルなお約束。
前作と同じコメントを自信を持って繰り返しますが、ヘヴィ・ロックとしては正直、ヌルイ。


しかし、このナヨナヨ感がiPodヘヴィ・ロック・リスナーの耳を直撃する。
元々ボーカルもギターも軽いわけだから重低音の劣化なんて屁でもない。128KbpsもAACMP3もまとめて掛かってこい。街を歩きながら、胸ポケットで楽しむヘヴィ・ロックにトラウマも絶叫も圧倒的なツーバスも不要、というジャンル対応型のポップ・マーケット寄りヘヴィ・ロック愛好家のプレイリストを独占する、珠玉の名盤が誕生しました。爽やかな春の訪れに、花見のお供に、アラバマ州モンゴメリから届いた極上の爽やかデス声をどうぞ。


アルバム後半へと進むに従って惜しげもなく吐き出されるメロディの山。正直、アルバム本編ラストの"Without A Trace"なんてジョン・メイヤーの曲と言われても違和感が無いような仕上がりで、通して聴くと自分がヘヴィ・ロック・アルバムの再生ボタンを押したんだという事を忘れてしまいそうになりますが、この路線こそがiPod時代にヘヴィ・ロックがサヴァイヴする数少ない方向性のひとつを照らしているのは間違いない。希代のメロディメイカーとしての才能を生かして、このまま頑張って欲しいものです。


最後に前作『Lonely Position Of The Neutral』のレビュウ文末に僕が書いた言葉と、amazon.comのエディター・レビューを引用・併記しながら締めたいと思います。


『Lonely Position Of The Neutral』 しまけんレビュウ
これを「ヘヴィロックの形骸化」なんて叩くのは、最早完全に的外れなんでしょうね。
彼らはきっと普通に綺麗なメロディを持つアメリカン・ロックを演りたいだけで、今の時代にそれを一人でも多くの人へ届ける手段として「コーラスの音圧アップ」や「デス声スクラッチ」を利用しているだけなのかも。売れ線、もう飽きたと切り捨てるのは簡単だけど、こうも爛熟期を迎えるまでに流行ったヘヴィロックの一体どこに「売れ線」の要素が含まれていたのか、その本質を射抜いた興味深いアルバムであると思います。


おそらくジャンルとしてのヘヴィロック・ブームは1年以内に終息するのでしょうが、グランジがメインストリーム・ロックに吸収されていったように、ヘヴィロックの持つエッセンスはこうした形でアメリカン・ポップスの歴史に残っていくんじゃないでしょうか。


(中略)
と思いながら聴くとこのタイトルは深いぜ。"Lonely Position Of The Neutral"....


amazon.com Editorial Reviews by Ian Christe
(翻訳)
ただ惜しいのは、洗練されたリフレインが滑らかすぎるために、ともするとサウンドが柔らかく聴こえる点だ。アルバムのタイトルが暗示するように、どっちつかずのスタイルから方向転換した方がバンドのグルーブがもっと鮮明になるはずだ。


惜しくなんてねえ。このニュートラルが、このパラレルが正解なんだよ。
1stが『Lonely Position Of The Neutral』で2ndが『True Pararells』で2ndの1stシングルが"Stronger"。この確信を持ったネーミングこそがTRUST COMPANYのオリジナルなスタイル。
そして、暗示は明示になった。

投稿者 しまけん : March 27, 2005 02:44 PM | トラックバック
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