iTunesの再生回数を単純に集計した「2004年僕がiPodで最も良く聴いた楽曲」の中から2004年リリースのシングルを抽出してお送りする『2004年Best Single TOP10』、第2回です。
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9位 Float On / Modest Mouse
1985年、ベースにバズ・オズボーン、ドラムにMELVINSのデイル・クローヴァーを迎えて、後にロックの伝説になる男がワシントン州の或る街で人生初のライブステージに挑みました。
彼の名はカート・コバーン。
9年後、彼は初ステージを踏んだこの街出身のヘヴィ・アンヴィエント・バンド、EARTHを率いるディラン・カールソンが買った散弾銃で、衝撃的な自殺を遂げることになります。
更に5年後、後に全くロックの伝説にならない『時計仕掛けのグランジ』という冴えないロックサイトを立ち上げる、前途有望な極東のヒゲ青年が、大学でアジアの国際政治を専攻していました。
彼はこの街をテーマに「ベトナム戦争後のインドシナ難民とワシントン州」なるレポートを提出し、教授から落第ギリギリの衝撃的なC評価を受け取って危うく自殺しそうになります。
教授のコメントは「ベトナム難民に関係ない行数稼ぎの音楽話が多過ぎる」。
初ライブと散弾銃。いわばカート・コバーンのはじめから終わりまで(なんか冬ソナみたいだな)を見守った、この街の名前は、ワシントン州オリンピア。
最近ではイスラエルのパレスチナ侵攻に抗議し、人間の盾としてブルドーザーに轢かれて死亡した大学生、レイチェル・コリーさんの出身地としても知られています。そして、この街が生んだ地味なインディ・ロック・バンドの曲が、2004年僕がiTunesで最も良く聴いた楽曲TOP10の第9位です。
Modest Mouseの"Float On"。
別に自分がレポート書いたことあるから引っ張るわけでも無いんですが、ワシントン州オリンピアは所謂革新自治体として知られる街です。前述ベトナム難民の受け入れでも、ベトナム戦争終結時から80年代のUSホームカミング法時代に到るまで、一貫して積極的な受け入れを続けていました。最近ではイラク戦争に反対する決議文を出していますね。
音楽的な話題としては、最近めっきり取り上げられることが少なくなりましたが、90年代初頭に起きた「ライオット・ガール」ムーヴメント(ビキニ・キル...!!)発祥の地、というのが有名なところでしょうか。
ライオット・ガールもパンク・ロックとフェミニズムを融合させたムーヴメントですし、有機栽培農家やらIT関連企業が多いお土地柄故、なのかも知れませんが、ラディカルな言論が支配的な地域、というか、レイチェル・コリーさんのような人材を輩出しやすい土壌があるようです。
イコール、優れたインディ・ロック・バンドを輩出しやすいお土地柄。
かつてUSインディ・ロックの良心と呼ばれたModest Mouseは、メジャー・レーベルEpicからの2作目となる本作『Good News For People Who Love Bad News』をBillboardアルバム・チャート19位に送り込み、堂々のゴールド・ディスクを獲得。ここ数年間USインディ・ロックはUKのメディアが先物買いしてアメリカに逆輸入という状況が続いていたので、久しぶりに自前スターで商業的な成功を収めた感じです。
まあ、理由は音を聴いたら納得というか、これはUK発では火が着きにくいやね。
メロディ(80年代気質のディスコ・ビートちゃんが散りばめられているので、トラックと呼ぶべきでしょうか)は凄く繊細なのに、ボーカルは完全なおっさん声。素っ頓狂な裏声で、まあ身も蓋も無い表現をすれば「デイヴィッド・バーンみたいな」で終わる声なんですけど、ちょっと馬鹿っぽくて笑える。
これです。幾らインディ・ロック業界で名を上げようが、NEW ROCKブームが来ようが、アメリカのメインストリームで売れ、そして80年代懐古モードに入る中年にアピールするには、ちょっと間抜けな部分を意図的に残しておくこと。「相手を追い詰めないオシャレ」。そして繊細なビートの奥に宿る、アメリカの大地ならではの骨太さ。俺も田舎のディスコでビール腹揺らして踊っちゃって良いのかな。良いんです。
気が付いたら、数年来ロックンロール・リヴァイヴァルだNEW ROCKだと盛り上がるロック言論に背を向けて、モダン・ロックやCCMの話ばかりしてきた僕も、このじわじわと攻めてくる荒削りなビートとおっさん声の前にふわふわと泳がされていました。最初はなんてこと無いと思ったのに。
まさに、"Float On"。もうこのハーモニクスだけで逝ける。
ペラペラの羊がなぜか曲の奥深さを演出する逆説のPVも秀逸です。
ただ、PVに関しては続くシングル"Ocean Breathes Salty"が超弩級の名作なので、もしチェックするなら是非こちらを。僕はあの鴉を靴箱に入れる場面あたりからずーっとじんわり涙ぐんでました。本当に、映画みたいな構成で。後味も良い。
これ大事ですよね。何度も鑑賞に耐えられるように作りたかったのか、どうも最後ごちゃごちゃしたまま謎なのか単なる詰め不足なのか良くわからないエレメントを残したまま終わるPVって多いじゃないですか。AVじゃないんだから、そんな何回も見ねえっつうの、きょうび。
一度聴いただけでガツンとくる、そんな中華料理みたいな濃厚さは無い。
眼鏡をかけて部屋に引きこもって探求するような学術性も無い。
だけど何が魅力なのかも良くわからないまま、地味な心地よさに任せて際限無くリピートしていたら、虜になっていた。人生に欠かせない曲になっていた。"Float On"には、そんな空気みたいな存在感があります。
最後に、「音楽に関係無い行数稼ぎの話が多過ぎる」とC評価を食らうのを承知の上で、彼らModest Mouseの出身地である、ワシントン州オリンピア絡みの話をもうひとつ。
ジャカジャーン(世界仰天ニュース的なBGMで)♪
1999年、オリンピアのラジオDJチャック・ウエストは、自分の番組にリスナーから送られてきた「虫のような物体が映っているビデオテープ」を見て腰を抜かした。スロー再生したそのビデオには、なんと、通常再生では我々の目で見ることができない、高速で回転しながら飛行する螺旋状の羽根を持った小さな生物が確かに映りこんでいたのだッ!
その後、アリゾナ州やメキシコなど、北中米各地で、この不思議な生物の目撃情報が相次いだ。
しかし、未だにこの生物の捕獲に成功した例は無く、生体や生息地域など、全てが謎に包まれたままである。怪奇現象愛好者たちは、従来の生物体系から全く逸脱したこの生物を、畏敬の念を込めて、「スカイフィッシュ」「フライングロッド」などと呼ぶ。
2002年、この不思議な生物は「ロッド」の名前で『ジョジョの奇妙な冒険』に登場。
「温度を奪って敵を死に到らしめる」という恐ろしい能力で、リキエルくん操るスタンド「スカイハイ」と共に、主人公徐倫ちゃんを大いに苦しめたのは記憶に新しいところ。
ここはModest Mouseのレビュウを仕上げ終えた僕の心境と見事なまでにシンクロする、リキエルちゃんの名科白を引用しながら、2004年「しまけんがiPodで最も良く聴いた楽曲TOP10」、漸くの2回目を終えたいと思います。
「瞼が勝手にストーンと落ちて来ちまって...」「オレの目を上げてください神父様」
このエントリは夜中に書きました。途中で5回ぐらい寝たので、文字の間違いや文章のおかしいところは多めに見てください。そういえば、僕ずっと「なぜリキエルのスタンド名はスカイハイなんだろう」と思ってたんですよ。これ明らかにジグソーのヒット曲の曲名から来ているわけですけど、ちょっとそれまでに引用されてたバンド名や曲名とカラーが違いすぎるじゃん?
直前がボヘミアン・ラプソディで、その後がアンダーワールドなのにさ。
このエントリを書いてて初めて気付いた。
リキエル(おそらくソニアリキエルから)とジグソーのスカイハイ(ミル・マスカラスの入場テーマ曲)、つまりソニアリキエルとマスカラってシャレだったんだね。「そんなこと、とっくの昔に知ってるよ」って感じだったらごめんなさい。でも安直かつ奥が深いわ、ジョジョ。ちょっと感動した。
ファンならご存知かと思いますが、『ジョジョの奇妙な冒険』、第一部の主人公ジョナサン・ジョスターの名前は当時荒木飛呂彦がファミレスのジョナサンで良く打ち合わせしてた、というところに由来しているそうです。
安直!
昔スカパーか何かでやってた番組で、船越栄一郎のインタビューに応えて荒木先生が言ってました。
この番組、動く荒木飛呂彦が見れるという激レア番組だったんですが、『ジョジョの奇妙な冒険』の大ファンだという船越栄一郎が、「リサリサは波紋の修行を積んでいたから50歳のときでも20歳ぐらいに見えましたよね。なのに同じ波紋の修行を積んだジョセフはなぜあんなに早くおじいちゃんになってボケてしまったのか」と荒木先生に鋭くツッコミを入れたときには、さすが二時間ドラマの帝王!とか思った。半端ねえ推理力だぜ。